養蜂場日記
夏は来ぬ♪
2009年5月30日 / 養蜂場日記
「卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて~忍び音もらす夏は来ぬ~♪」大好きな歌です。
養蜂場の隅に植えてあるウツギの白い花(卯の花)が咲く頃、決まってホトトギスの鳴き声を耳にするようになります。
先日(5月23日)、その初音が聞こえてきました。
一年ぶりに聞く懐かしい声です。「テッペンカケタカ」と聞きなすそうですが、どうしても「テッペンハゲタカ?」に聞こえてしまいます。
つい「よけいなお世話、まだ大丈夫だよ!」と叫びたくなります(笑)
7月の初め頃まで、毎朝、ホトトギスの「テッペンハゲタカ?」で始まる日々が続きます。
貴賓室
2009年5月28日 / 養蜂場日記
蜂の巣にピーナッツ? いいえ、これは「王台」といわれる女王様の揺りかごです。
次世代の女王の幼虫がこの中で育っています。
産み落とされた卵から女王蜂になって出てくるまで16日間。
旧女王は新しい女王蜂が出てくる2~3日前に、3分の一ほどの働き蜂を引き連れ、新天地を目指して巣を後にします。これが“分封”もしくは“分蜂”といわれる巣別れの行動です。
5月の連休明けの頃から王台の数が増えてきます。養蜂家にとって、この時期の分封は採蜜のための戦力低下につながり、どうしても阻止しなければなりません。
絶えず、内検といわれる巣内部の検査が欠かせません。
“蜂かぐら”状態の中、何十群もの内検は大変ですが、養蜂家なら、必ず一年に一度、通過しなければならない関門です。
素敵な建築家
2009年5月26日 / 養蜂場日記
これは一体何でしょう? しゃもじ? 靴べら? パン?
正解は蜂の巣です。
作業の都合上、私が巣枠の間を広げました。その広がった空間に、ミツバチ達が1昼夜で作り上げたものです。
養蜂家はこれを“ムダ巣”と呼びます。文字通り何の役にも立たない巣ですが、その造形の巧みさには驚かされます。
幾何学的に正確に配置された六角形の巣房、そして表裏の巣房は重ならず、それぞれの3辺の交差部分が底部の中心に来て、お互いを強化するように作られています。
設計図もなければ、現場監督もいません。ただただ何百、何千の働き蜂が群がって仕上げていくのです。
“神秘の昆虫”といわれる所以です。
スズメバチ女王!
2009年5月22日 / 養蜂場日記
長く日記の更新を休んでしまいました。この時期は養蜂家にとって、一年で一番忙しい季節なのです。
フルフェイス、しかも鎧で完全武装。
養蜂家にとってはとても厄介な存在であるオオスズメバチ。女王蜂だけが、枯れ木の割れ目や落ち葉の下で越冬し、暖かくなると活動を開始します。最初は女王蜂自ら巣作り、子育てを行い、狩りにも出かけます。
そのうちの一匹がミツバチを狙って養蜂場にきたようです。10日ほど前、巣箱の前にいたものを捕らえたものです。体長約5センチ、他のオオスズメバチより濃い目の体色、動きがゆったりとしています。
この時期の女王蜂1匹の捕獲は、数百匹のオオスズメバチの捕獲に匹敵するほどの価値があります。オオスズメバチのコロニーは500~1000匹ほどで構成されています。狩蜂である彼等は様々な昆虫は勿論、他種の蜂類も襲います。ミツバチの巣も例外ではありません。大挙して襲われた場合、2~3時間で約4万匹のミツバチのコロニーが全滅してしまいます。
秋風が吹き始めて、野外の獲物が少なくなる頃になると、養蜂場にやってくるオオスズメバチの数が増えてきます。宝塚はちみつでは様々な工夫を凝らして、彼等の攻撃からミツバチを守っています。秋も深まる頃には、毎日、30匹ほどを退治しています。
女王蜂
2009年5月9日 / 養蜂場日記
各群には、必ず1匹の女王蜂がいます。女王蜂がいなければミツバチの群れは成立しません。
女王蜂が飛ぶのは一生の間にたった一回だけ。誕生後しばらくして、生涯唯一度の交尾飛行にでかけます。
20分間の飛行の後、巣に帰り、あとはただひたすら産卵に没頭します。春から初夏にかけての盛期には、一日に1000~2000個の卵を産みます。時には、3000個に及ぶ女王もいるそうです。
女王と言っても一生働き詰めで、誰よりも忙しい毎日なのです。
働き蜂が40~50日で一生を終えるのに対し、女王蜂の寿命は約3年、実に20倍以上長生きすることになります。中には5年ほど生きた記録もあるそうです。
人生80年の人間に例えれば、1600歳の人がいるということになります。働き蜂が口移しで与えてくれるローヤルゼリーが、この素晴らしい生命力の源です。
巣門の前は大混雑
2009年5月7日 / 養蜂場日記
仕事に出かけるハチ、仕事から帰ってくるハチ。
時々、ハチ同士の衝突事故が起こります。地面に墜落してもすぐに起き上がり、巣に駆け込むのもいれば、そのままボーッとして、しばらく動かないものもいます。
働き蜂たちは、一日中花から花へ飛び回って懸命に働いています。蜜嚢(みつのう)という胃袋に花蜜をいっぱいに詰め込み、両足には花粉ボールをつけて、時速30キロの速さで飛んで帰ってくるハチたちは、へとへとになっているのです。
花粉ボール2個で、働き蜂の体重の半分の重さがあるというのですから、無理もないですネ。
5月末に蜂の数はピークに達します。これから巣門のラッシュは、さらにエスカレートしていきます。
真夜中のユンボ?
2009年5月4日 / 養蜂場日記
養蜂場のすぐ横の空き地に、誰かが大きな穴を4つほど掘っていました。
どうもユンボで掘りまくったみたいです。犯人は誰?
近くの農家の人によると、大好きな葛の根を食べるために、イノシシ君が掘り起こすのだそうです。あっちの土手も、こっちの草原も掘り返されて、穴だらけになっています。
そういえば夏には、隣の空き地に葛が生い茂り、養蜂場に侵入したつるを何度も切って回ったことを思い出しました。
最近知り合った元猟友会員のベテラン老人によると、イノシシは雑食性で、何でも食べるとのこと。今回は、葛の根を食べながら、ミミズやモグラも探していたのだろうということでした。
鼻面で掘り起こすのだそうですが、それにしてもすごい力です。
人間の頭大の石も幾つか転がっていました。
夜行性なので、目撃したことはありませんが、我が職場のすぐ横で、100キロほどの巨体が動きまわっていたと思うと、ちょっと・・・
侵入者!
2009年5月3日 / 養蜂場日記
「痛い、痛い、許して」「オラッ 他人の領分を侵す奴はこうしてやるっ」「俺にもやらせろ」「こいつめ こらしめてやる」
という会話があったかどうかは分かりませんが・・・とにかく侵入者には厳しい制裁が加えられます。
養蜂場には沢山の巣箱が並んでいます。中には帰るべき巣箱を間違えて、写真のような事件を引き起こすミツバチがでてくるのです。
そうなると、よってたかっての袋叩き状態です。
自分達のコロニーを守り、存続させるためには、一片の妥協も許されないのです。
勿論、ミツバチ以外の侵入者や外敵も同じような目にあわされることになります。
お地蔵さん
2009年5月3日 / 養蜂場日記
5月1日 気温23度、快晴、無風。
ミツバチにとって最高の気象条件は、人間にとっても同じ。あまりに清々しいので仕事は中断、近くのレンゲ畑でお地蔵さんになりました。
耳を澄ませば、沢山の鳥のさえずりが遠く近くに聞こえます。見上げれば、雲ひとつない紺碧の空にトンビが舞い、のどかにピ~ヒョロロ~とやっています。
私の目の前20~30センチのところまでミツバチが飛んできて、一心不乱に花の蜜を集めています。レンゲの花は6~8個の小さな花が放射状に集まって一つの丸い花の形を作っています。そのひとつひとつを、順番にせわしなく、ぐるりと歩き回り、蜜を集めています。1メートル四方に7~8匹のミツバチが飛び回っています。田んぼ全体がブオ~ンという羽音に包まれ、何とも言えない心地よい“けだるさ”に引き込まれていきます。
周囲の林も色鮮やかな新緑に覆われて、見えるもの、聞こえるもの、全てが生命力に満ち溢れています。大好きな季節を、大好きなミツバチと共に過ごせる幸せを存分に味わった一日でした。